【肝臓の科学】なんでもこなすエリート臓器『肝臓』
○本記事では肝臓の構造やはたらきについて解説!生物基礎の範囲も抑え、生物のレベルも少し入るぞ!
紳士淑女の諸君ごきげんようCyだ!
肝臓は消化管にくっついている中で最大の臓器!
成人の肝臓では2キロとなることもある。
そんな巨大臓器『肝臓』では一体何が行われているのであろうか?
※今回の記事は思ったよりヘビーなものとなってしまい、基本的な用語を抑えていないとピンとこない場面もあるため以前の記事を読むことを推奨する
- 1.肝臓の構造
- 2.『胆汁』とはなんぞや
- 3.『血糖濃度』のバランスを保つ
- 4.『タンパク質の合成と分解』
- 5.尿の前段階『尿素』の合成
- 7.地味に知られていない『体温の維持』と『血液の保持』
- 8.ブレークタイム 肝臓の再生能力はS+
1.肝臓の構造
まずは大きなところからみていこう。
肝臓は右葉と左葉という二つの大きなパーツに分かれており、
その二つのパーツに向かって4つの管
肝静脈、肝動脈、肝門脈、総胆管がある。
一から解説していくとそもそも動脈というものは、心臓から血液が送り出されている方の血管であり
全身に巡らせるための高い血圧に耐えられるように筋肉の層が発達しており丈夫な構造となっている。
反対に静脈はこれから心臓に戻されるための血液が流れている血管であり
動脈ほど血圧が高くなく血液の逆流が起こりやすいため、逆流を防ぐための弁がついている。
これを踏まえた上で再度4つの管を分類すると
肝静脈と肝門脈は静脈、肝動脈は動脈であり総胆管は血液ではなく胆汁という物質を運ぶ管である。
では総胆管は後ほど説明するとして肝静脈と肝門脈は一体どう違うのか?
肝門脈というのは消化管から出る静脈の合流地点であり、消化管で吸収された栄養分を含む血液が流れてくるところである。
酸素も栄養も薄い普通の静脈と違って、栄養タップリではあるが心臓に戻る側の血管であるため静脈に分類されているのが肝門脈なのである。
(ちなみに門脈とは胃や消化管から肝臓につながってる血管のことである)
では次は小さな構造を見ていこう。
まず肝臓は
大きさ1mmほどの肝小葉が50万個ほど構成されてできているものである。
その肝小葉1つには約50万個もの肝細胞が集まっている。
肝小葉は六角柱の形をしており、その周りを血管や胆管がグルリと囲んでいる。
ここから一気に細かくなっていくため何度も読み直して理解して欲しい。
肝小葉の周りには
小葉間動脈と小葉間静脈があり、そこから肝小葉内の毛細血管を伝って大きな中心静脈
へといきつく。
中心動脈というものはなく、中心静脈に行き着くまでの毛細血管で二つの血管は合流する。
中心静脈へと入った血液は最終的には肝静脈へと流れ込む。
肝小葉内の毛細血管を類洞といい、肝小葉には多くの穴(孔)があいているため効率よく物質交換ができる仕組みとなっている。
また肝小葉から外側に毛細胆管が伸びており、肝細胞でつくられた胆汁がそこへと流れ込み小葉間胆管を通じて総胆管へと行く。
総胆管から胆汁を貯めるための胆のうへと胆汁は送り込まれ、必要に応じて胆のうからすい臓や十二指腸へと分泌される。
2.『胆汁』とはなんぞや
1の細かい説明内で多く出てきた『胆汁』
飛ばして読んできた人に説明すると胆管などの胆汁の移動経路についての詳しい説明は1でしたのでそちらを確認して欲しい。
まず胆汁とは何か、一言で説明するならば
脂質の消化や吸収を補助してくれる消化酵素を含まない物質である。
中学理科を習っている子にとっては消化酵素を含まないというフレーズはミソとなる。
胆汁の成分は2つある。胆汁酸とビリルビン(水溶性)である。
主成分である胆汁酸は脂質であるコレステロールからつくられており、
胆汁酸は脂肪の消化や吸収を助けてくれる。
また胆汁のメインは酵素(タンパク質)ではなく脂質である。
そしてビリルビンは赤血球が破壊されるときにできるヘモグロビンの分解産物である。
ヘモグロビンはポリペプチドの結合したものであるためタンパク質である。
肝臓へと運ばれたビリルビンはまだ疎水性のものであり胆汁として活躍するには不十分である。
そのため水溶性へと変化させられたあとに胆汁中に放出される。
(細かいことになるが、赤血球の破壊は主に脾臓で行われるが肝臓や骨髄でも行われる。
またヘモグロビンに含まれる鉄イオンは肝臓に貯蔵される。)
肝細胞で作られた胆汁は胆のう(のう=袋)へと送り込まれ貯蔵され、濃縮される。
食べ物が胃を通った後に十二指腸へとたどり着いたときに胆汁が放出される。
3.『血糖濃度』のバランスを保つ
肝臓は血糖濃度を調節してくれるはたらきもある。
はたらきの仕組みについて書く前にそもそも血糖とは何かというところから始める。
端的に言うと血液中のグルコース(単糖)のことである。
このグルコースの濃度は約0.1%に保たれており、各細胞が呼吸によってATPをつくる際にエネルギー源として消費されるものだ。
このグルコースをグリコーゲンとして合成して貯蔵したり、貯蔵されているグリコーゲンを分解してグルコースへと戻し肝静脈へと流すことで血糖濃度を調節している。
要は
高血糖のときにはグリコーゲンへと合成し血液中のグルコースを減らし
低血糖のときにはグリコーゲンを分解しグルコースの量を増やして血糖値を維持する仕組みである。
わざわざグリコーゲンを合成するメリットは細胞内の浸透圧を大きく変えることなくグルコース分子を貯めることができることだ。
また肝臓では糖質以外からもグルコースが合成されるときがある。
それが『糖新生』である。
糖新生の過程ではATPが消費されてしまうが、低血糖の時にはこちらの方法もとられる。
筋肉から生まれる乳酸と細胞内に含まれるアミノ酸からピルビン酸を作り出し
脂肪組織に含まれるグリセリンとピルビン酸を合成することでグルコースができる。
中学理科や生物基礎を勉強してるなら覚えなくてもいいと思う。
4.『タンパク質の合成と分解』
アルブミンやグロブミンなどのホルモン等のさまざまな物質と結合して運搬する物質はおもに肝臓で合成される。
アルブミンは血しょうの浸透圧の維持に大きく関与するため、肝臓によって一定の濃度が無事保たれているといっても過言ではない。
肝臓で合成されるのはおもに血しょう中に含まれる血しょうタンパク質である。
5.尿の前段階『尿素』の合成
尿素について書く前に少しだけアミノ酸について書かせてもらう。
血しょう中に含まれるアミノ酸は各細胞へとたどり着いたとき
アミノ酸→タンパク質・核酸 という合成が起こる
しかしどうしてもいらない不要なアミノ酸は呼吸活動によって消費されることで人体に有害なアンモニアへと変貌する。
そのアンモニアを毒性の少ない尿素へと変えるのが肝臓の役目である。
尿素は血液中に放出され腎臓でろ過されてから尿として排出される。
仕組みについて少しだけ書くと
アミノ酸やタンパク質が分解されたときに生まれるアンモニアは、それぞれの物質を経て肝細胞の尿素回路(オルニチン回路)の反応にぶちこまれ
毒性の少ない尿素へと変換される。
オルニチンやらアルギニンやらシトルリンについてはまだ私も勉強不足のためよく把握しておらず書くのは省略させてもらう。
6.酒飲みにはありがたい『解毒作用』
アルコールや薬物、毒物は肝臓によって『解毒』
される。
解毒された後は無害な物質や排出されやすい物質となり、胆汁の成分と一緒に便として排出されたり、腎臓へ運ばれて尿として排出されたりする。
解毒の仕組みについても生物基礎の範囲を大きく逸脱するため省略させてもらう…
申し訳ない…
代わりに薬物代謝について少しご紹介しよう。
服用した薬はどのようにして全身にはたらいているのだろうか?
薬は通常だと肝臓の分解機能を超えた量を摂取し、分解しきれなかった分が全身に回った後で再度肝臓に戻り分解される。
また坐薬は直接肛門へ注入するため、わざわざ肝臓で分解の手順を踏まなくとも直腸から吸収されるため効果が早く出る。
7.地味に知られていない『体温の維持』と『血液の保持』
序文で書いたことを覚えているだろうか?
肝臓は消化管にくっついている中で最大の臓器であると…
『体温の維持』と『血液の保持』について理解するための前提条件である。
デカイ臓器を維持するためにはより多くの血液(酸素や栄養)を必要とする。
この最大臓器である肝臓にはなんと心臓から送り出された血液の約3分の1が集中する。
そのため肝臓では代謝が非常に活発に行われており、多くの熱がうまれ体温の維持に関与している。
8.ブレークタイム 肝臓の再生能力はS+
肝臓には強靭な再生能力がある。それを『代償性肥大』と言う。
一部を切除しても一ヶ月経てばもとの大きさに戻るため肝がんになったときの治療法のひとつとして
がん細胞が存在する部分をまるごと切り落としてしまうやり方もあるらしい。
生体内部最大の化学工場・貯蔵庫の役割だけでなく自動修復まで行ってくれる。
もはや漫画の主人公のようなハイスペックさを持つのだ!
いかがだったろうか人体最大の化学工場『肝臓』についての記事は。
たまには少し密度のある記事も書いていこうと思うので是非試験勉強にも役立てて欲しい。
(なにより自分の勉強になる)
肝臓はなんでもこなすエリート臓器であり、我々に陰ながら多大な貢献をしてくれる。
しかし彼(肝臓)はかなりのシャイボーイでなんらかの異常があってもなかなか我々に教えてくれないのだ。
『沈黙の臓器』肝臓、これからは少しでもいたわってやってくれ!
ご精読ありがとう本記事はこれで以上である!
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